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都庵

現在は「妖怪アパートの幽雅な日常」「The MANZAI」の女性向け二次創作等の物置。オフラインの自家通販もやってます。

   

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春の嵐

千晶×稲葉です。
少し接近率……というか、密着率を上げてみました。(爆笑)
お互いちょこっとずつ意識し始めてって感じでしょうか。
その割にはベタベタしすぎですが……。
まぁ、いいや。
ちょっと尻切れですが、気が向いたら続きを考えます。

先月、台風と前線が活発な日に、傘を一本だめにしました。
高層ビルとビルの間に凄い強風になるところがありまして、そこを通らないと会社にいけないのですが、そこで傘の部分の骨があっという間にひん曲がりました。
帰りどうしようかと思っていたら、変える頃には雨やんでました。
ほんと良かった。
でも、このときの出来事はいずれネタに使ってやる!と心のメモに残していたので、今回消化できて少しスッキリ。

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拍手[29回]



今日は、朝あんなに晴れていたのに、昼頃から暗くなり、授業が終わる頃には雨と風が台風並みにひどくなっていた。
今朝の天気予報によると、当地の天気は晴れのち雨。台風も近づいてきているけど、前線がかかってきていて、台風からの湿った風が前線を刺激して、強風波浪警報が出るとか出ないとか……。
「おい、今日は早く帰れよ~。電車止まるぞ~」
顧問不在で部活をしていた俺たちだが、見回り中の教師、麻生に声をかけられた。今まで、カーテンを閉め、字幕無しの映画鑑賞をしていた俺たちは、カーテンを開けて唖然とした。雨はさほどひどくは無いが、風がひどい。時折訪れる突風で木が大きくしなっていた。
「うわ、いつの間にか外凄いじゃん! 絶対濡れる~」
「やっべ~! 俺折りたたみしかもってきてねぇ」
「ぎゃー、私傘持って着てないよ」
「あ、あたし置き傘あるから貸してあげる」
「うそ~、ありがと~!」
そんな会話がちらほら上がる。
「じゃぁ、今日はここまで。続きは次回な。解散。気をつけて帰れよ」
3年になり部長を拝命した俺は、即刻決断した。部員の中には電車通学のヤツがいる。それに、入ってきたばっかりの一年生は、まだ幼さの残るチビが多い。雨がまだ強くないうちに返したほうがいいもんな。
ぞろぞろ引き上げていく部員の中から、田代が寄ってきた。
「稲葉、片付け手伝おうか?」
「いや。コレ返しにいくだけだし。日誌も書くこと少ないから、お前も早く帰れよ」
「そう? じゃぁ、お先に。稲葉も早く帰んなよ」
「おう」
田代を見送って、俺はビデオを片付け、クラブの日誌をちょろっと書いて、戸締りをした。鍵を職員室に返しに行くと、教員たちは片隅にあるテレビに集まっていた。帰りの準備をしている教師もいる。
「なんだ稲葉まだいたのか。早く帰れよ、外だいぶひどいぞ」
俺に気がついたのは担任の千晶だった。
「もう帰るよ。コレ部室の鍵」
「おう」
「テレビ、ニュース?」
「あぁ、大雨と風で、電車が止まりだした。特急は運休で、各線遅れが出てる」
「うげ、あいつら大丈夫かな……」
「おいおい、人の心配してる場合じゃないぞ。お前徒歩だろ? 気をつけて帰れよ」
「おう」
俺は早々に教室に戻り、持ってきていた傘を手に階段を下りた。いつの間にか校内には人気がなく、窓に打ち付ける雨の音だけが響いていた。
靴をかえてピロティを出ると、灰色の雨が一段と強く地面をたたいていた。
「うへ~、こりゃひでぇな」
俺はプチを尻ポケットからかばんに移して傘を広げた。
ザーザー降りの中へ一歩踏み出すと、傘が風邪に押されて飛びそうになった。かばんを抱え、柄の上の方を持ちながら歩く。あっという間にズボンは濡れて重くなってきた。校庭を横切って校門までたどり着いたところで、いっそう強い風邪が後ろから吹き付けてきた。
「ご主人様、危ない!」
どこからかプチの声がしたかと思ったときには、傘が勢いよく飛ばされれていた。ミシミシッと音がしてバサッと傘がそっくり返る。
「うわっ!」
傘が折れていた。枝の部分がぽっきりと折れ、ひっくり返った布の部分がバサバサと音を立てている。
「うっそだろ~」
このまま帰るにしちゃアパートは遠すぎる。学校に戻るか? でも、傘はコレしかない。迷っている間にもどんどん雨で濡れていく。
「ちきしょう!」
俺は来た道をダッシュで戻ることになった。
おいおい、どうすんだよこれから俺は……。
無残に折れた傘を、とりあえず廊下の片隅にある燃えないごみのゴミ箱に突っ込んでいると、千晶が現れた。手に鍵の束を持っているから、見回りにでも行っていたんだろう。
「稲葉、何やってんだ? お前びしょぬれじゃないか」
「千晶~、傘折れた~」
「げっ、マジかよ。しょうがねぇな~」
千晶はきょろきょろとあたりを見回し、誰もいないことを確認してから俺の耳に囁いた。
「車で送ってやるからちょっと待ってろ」
「マジ!? ラッキー! サン……むぐ」
サンキュー千晶、と続けようとしたところで口を手でふさがれた。
「声でけーよ。他の先生のは内緒だからな、裏門で待ってろ。仕度して来る」
了解とばかりに俺は親指を立てて見せた。
千晶と別れ、裏門で待つ間、びしょぬれになった身体を何とかしようと思ったが、もっていたハンカチでは顔とかばんを拭くのがせいぜいだった。
「よかったですな、ご主人様」
かばんの橋からフールがぴょこんと顔を出す。
「ほんとにな、渡りに船って感じだ。でも、傘買い換える羽目になったのはちょっと痛手だな」
フールと他愛も無い話をしていると、すぐに千晶はやってきた。
「待たせたな。じゃぁ、行くか」
「行くかって、千晶傘は?」
「車の中」
「……」
「15メートルくらいだ。走れ」
たしかに千晶の車は目と鼻の先に見えるが……。
「また濡れるのかよ」
「ほら、とっとと行くぞ」
先に走り出した千晶を追って、俺は再び豪雨の中に身をさらした。
運転席に乗り込んだ千晶が助手席を空けたので、俺は助手席に滑り込んだ。
「やっぱ濡れたな」
「そりゃ濡れるって。……悪い、俺シートぬらしてるかも」
「あぁ、かまわねぇよ。それより、後ろのシートにタオルつんでるから、それ取ってくれ」
千晶は濡れた上着を脱ぎながら言った。
後部座席、千晶側の後ろの隅に白いタオルが見えた。でもかなり奥のほうにあるので、手が届かない。
「シート倒せよ」
「どうやって?」
「下にレバーがある」
「ん? どこだ?」
めったに乗らない車の助手席に、俺は千晶の言うレバーを見つけられないでいた。
「ここだよ。 ここを押してこっちに重心をかけると……」
千晶が俺にのしかかるようにして座席横のレバーを引き、シートを勢いよく倒した。
「うわっ」
「おっと」
あまりに勢いがついてしまい、千晶がバランスを崩してそのまま俺の上に倒れた。ちょうど千晶が俺を押し倒しているような状態だ。
「すまん。重かったろ」
「いや、べつに大丈夫だけど、こんなところ田代に見つかったら、とんでもないことになるだろうなぁと」
「ははははは」
「ハハハハハ」
俺たちがこの状況に苦笑しあっていると、遠くで女の声がした。
「!」
「しっ!」
そのままの姿勢で耳を澄ませる。ウィンドウをたたく雨の音に交じって、聞き覚えのある女の声が聞こえた。
「いいんですか先生、駅まで送っていただいて」
「いいですよ、私も通り道ですし、女性がこの雨の中かえるのは厳しいでしょうから」
「ありがとうございます」
一人は一年担任の女性教師でもう一人は青木の声だった。
「ちょっと、この状態まずくないか?」
俺は声を潜めた。あの、人の話聞かない潔癖モンスター青木だ。その青木に、こんないかにも『教師が生徒を車に連れ込んで襲ってます』な状態を見つけられたら……。
考えただけで恐ろしい。
「まずいな。でも今運転席に俺が戻ると、お前まで見つかる可能性がある」
「じゃぁ、このまま……」
「やり過ごすしかないな。幸いまだエンジンつけてないから、雨がブラインドになってくれるだろう」
「ひえ~~」
雨音に傘に雨粒があたる音が混じってきた。
千晶はよりいっそう身体を俺に預けてくる。千晶のタバコの香りが濃くなった。濡れネズミの俺から千晶のシャツへ水分が移動していく。
「千晶」
「し!」
また手で口をふさがれた。ふさがれた手の触れている部分から、千晶の熱が伝わる。
熱い。そう感じたときには、口だけでなく、千晶が触れている体全体がだんだん熱を帯びてきているような気がしてきた。
なんだ、これ。
千晶に肩を抱かれることはしょっちゅうで、抱きつかれたこともあるが、こんな恥ずかしいような照れくさいような、ドキドキする思いをしたことは無かった。
「ふぅ、行ったな。ん? 稲葉どうした?」
耳の傍で囁かれ、俺の身体に震えが走った。
「んっ……」
鼻にかかった変な声出た。千晶が無言で俺を覗き込んでくる。
おいおい、頼むからお顔近づけるな~!
「稲葉、おまえ……熱あるのか?」
口にあった手が俺の張り付いた前髪にかかり、そのまますっと後ろへ払われた。千晶の整った顔がどんどん近づいてくる。これって……。
コツン。
千晶のおでこと俺のおでこがぶつかった。
ぎゃ~近い! 近いって!
俺の心の叫びは千晶にまったく届くことは無く、千晶は目を閉じてなにやらうなっている。
「ん~、ちょっと熱いか?」
「ね、熱なんかねーよ」
「でもなぁ、顔赤いぞ」
「それは! ……あ~もう、いいから早くどいてくれ!」
「おっと、そうだったな、もうちょっと辛抱しろ」
千晶は「よっと」という掛け声で身体を上のほうに少しずらした。必然的に俺の顔は千晶の胸につぶされる。千晶がタオルを取る間、俺の嗅覚は雨の匂いと、千晶の匂いに支配された。一瞬くらっとくる。くっそ~、なんなんだ、この感覚。
「とれた。悪かったな押しつぶして。ほら、これでちゃんと……」
千晶は身体を離し、俺を見下ろした。ほおけていた俺と目が合うと、言葉が止まった。
「……」
「……なに?」
「いや、お前でもそんな顔するんだなと思って」
「そんな顔って?」
「ん~、なていうかこう……ドキッとする顔」
「なっ、何だそれ!」
「色っぽいっていうか……こう、ほんのり顔が赤くて……」
「それは、あンたがフェロモン垂れ流してるからだろうが!」
「お前に俺のフェロモンが効くかよ、いつも飄々としてるくせに」
「効く時だってあんだよ、今はそれで顔赤いんだっての! 悪いか!?」
「いや……悪くないけど……」
「………なんだよ」
「……」
「……黙るなって。っつーか、そろそろどいて」
「おう、そうだな」
千晶がようやく運転席に戻り、俺はシートを起こした。取ってもらったタオルを頭からかぶって、水気を取る。ドキドキはいくらか収まってきたが、今まで千晶の体温で暖められていたせいか、とたんに寒く感じた。体がまた震える。
「寒いか?」
「いや、たぶんさっきまで千晶があったかかったから……」
エンジンを回そうとしていた手が、不意に俺のほうに伸びてきて引き寄せられた。また俺は抱き込まれ、千晶にぴったりくっつくこととなった。
「な、何?」
「お前って、以外とたらしなのな」
「は? なんだよそれ」
「今お前は、俺にあっためてやらんといかんような気にさせたってことだ」
「……そんな変なこと言ったか?」
「言った。一瞬こっちがクラッと来そうになってビックリした位だ」
「そりゃこっちのセリフだっての。あぁ、もう…………」
離してくれって言いたいのに、言葉にならない。ドキドキや落ち着かない気持ちになるのが悔しい反面、千晶の腕の中はあったかくて気持ちよくて、自分からは離れがたかった。
なんだかぐちゃぐちゃだ。自分のことなのに、身体も思考回路も、まともに把握できていない。
俺は目を瞑って、雨の音に耳を済ませた。雨はいっそう激しさを増し、風と一緒になってバラバラと窓を打つ。四方を窓で囲まれた車内に、風の強弱とともにあたる雨粒の音は、なにかのリズムのように大きくなったり小さくなったり。強くなったり弱くなったりを繰り返す。
まるで、今の俺みたいだ。なんとも思わなかったりドキドキしたり。離れたかったり、くっついていたかったり。
俺は、さっきまでてんぱっていた思考が、やっと通常モードに喉って来るのを感じた。
まったく。千晶も俺も、狭い車内でなにやってんだか。
いつもの感覚が戻ってきたところで、鼻がつんとした。
「はっ……くしょん」
くしゃみがでた。それを合図に千晶は腕を解く。
「ちゃんとタオルで拭いてろ。風邪引くなよ」
「わかってる」
「シートベルと閉めろ。帰るぞ」
千晶はエンジンを入れ、暖房をつけた。そして、何事も無かったかのように、車を走らせた。

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無題

  • by 明帆
  • URL
  • 2008/06/06(Fri)12:36
  • Edit
わぉ!!!密着!!!!(黙れ
もうやばいです。画面から目が離せなくなりました(笑
漫才の歩む君の熱ネタみましたが、ぜひ夕士くんでも!!!!!!(氏ねぇっv
もう千晶ナイス!!!!!(おぃw
これからもじゃんじゃん更新してください!!!(笑

Re:無題

  • by あみや都
  • 2008/06/08 17:30
明帆さんこんにちは。
夕士の風邪ネタ・・・読みたいですか?
もうネタバレしちゃってますけど・・・書いてみようかな・・・。(その気になりやすい)
来週あたり、覘きに来てみてください。
ちょっとがんばってみようと思います。(苦笑)

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