最近どうもオチがなかなか決まらない。
オチ切れなくて長々書いては消すの繰り返し。
しまいには、どんどん方向ずれていく。
まぁ。それでもなんとか書けました。
6巻ネタ再びです。
微妙に前回の6巻ネタを引きずっています。
できればそちらを読んでからお読みください。
ちなみに次回更新はこの話の余談です。
それにしても、昼休み中ご飯食べながら何書いてんだか・・・
--------------------------
[17回]
「稲葉~、おっはよ~!」
「……はよう」
修学旅行から帰って、初めての登校日、田代はウキウキで登校してきた。
「じゃじゃ~ん」
取り出したのは分厚い某キャラクターのついたアルバム数冊。
「早速修学旅行の写真プリントアウトしてきました~」
「はえ~な」
「デジカメの写真なんて、いつでもプリントアウトできるもの。それより、見て見て~、こっち千晶ちゃんスペシャル~」
渡されたアルバムには、バスに乗り込み千晶、サービスエリアで食事をしている千晶、打ち合わせしてる千晶、スキーウエアの千晶、滑ってる千晶、くたびれてる千晶、歌ってる千晶、バスでうたたねしてる千晶と、まぁ、よくぞここまでとったよと感心してしまうほどの千晶オンパレード。カメラ目線のものも数枚混じっているが、ほとんど隠し撮りだろう。
「そんで、こっちは千晶ちゃんと一緒シリーズ」
次に渡されたアルバムには、千晶だけじゃなく、俺と一緒に写ってるのとか、C組の女どもと一緒に写ったやつとか、教師同士で写ってるものとかが集められていた。どれも、さりげないところを取っているわりによく取れている。
それにしても、千晶と一緒に写ってる写真、俺多くないか?
パラパラパラとめくっている間、なぜだか俺との写真が何度も出てくる。
「なぁ、田代、なんか俺が写ってるの多い気がするんだけど」
「だって、千晶ちゃん気がつくと稲葉の隣にいるんだもん」
「そうか?」
「これなんか最高でしょ?」
田代が示した写真には、千晶が俺を抱きよせてなにやらしゃべっている写真。これは、俺が水を買いに行った時、千晶にダシに使われた時のものだな。
「ハニーとダーリンのいちゃいちゃは、結構注文入るわよ~」
「お前ねぇ……」
俺があきれている間に、千晶が教室に入ってきた。
「お~、ホームルーム始めるぞ~」
結局、今日一日はみんな修学旅行の写真やら想い出話しやらで、落ち着きなく過ごした。
随行カメラマンがとった集合写真が配られ、一緒の班だった上野と岩崎、桂木が俺の写ってる写真を譲ってくれた。俺がカメラを持っていっていなかったことを知っている田代、桜庭、垣内も俺の分を焼きまわししてくれていて、少し感動した。特に田代がくれた封筒はかなりの厚みがある。
「悪いな、なんかこんなにもらっちゃって」
「いいのいいの。あんたのおかげで、写真の売れ行き好調だから」
千晶との写真のことか……。
「ははは……そうかよ。じゃぁ遠慮なく頂いとく」
修学旅行から帰ってきて、俺がカメラを持っていかなかったことを知ったアパートの住人は、なんで先に声をかけないと残念がっていた。
今日はこれがいい酒の肴になるだろう。
俺は張り切ってバイトへ向かった。
急な大量受注が入り、残業をして運送屋のバイトを終えると、もう外は真っ暗だった。急いでアパートに戻ると、クリが土産に買ってきたおもちゃを手に走ってきた。その後ろをシロ母さんが追ってくる。
「ただいま~。クリ~」
クリを抱いてアパートにあがると、大人たちはもう晩酌を始めていた。
「遅かったな~夕士」
「お疲れさん」
画家と詩人がブリ大根をつまみに日本酒を開けていた。
「早く、荷物置いてきなよ夕士君。ご飯よそっちゃうよ~」
秋音ちゃんにせきたてられ、俺は荷物を置きにいったん部屋に戻った。
「っと、そうだ。写真写真」
カバンから写真の束と、封筒を取り出す。上野達にもらった写真は朝もらったから休み時間に見たけど、田代たちにもらった写真はまだ封筒のまま開けていなかった。
アパートの住人たちと食卓を囲んでのいつもの晩餐。今日もるり子さんの飯は超絶激旨。
俺が早速写真を出すと、秋音ちゃんが飛びついた。
「わ~、これが噂の千晶先生?」
集合写真の一番端に立つ千晶を指さす。
「うん、そう」
「わ~、お洒落だ~。かっこいいー、いいな~こんな先生が担任で」
「どれどれ」
写真が酒飲みコンビに回っていく。
「へぇ、これはこれは色男だね」
そう評したのは詩人。
「そうか? なんか顔色ワリいじゃねぇか」
ちょっとひねくれた評価をしたのが画家だ。
「あ~、雪合戦してる。やっぱり雪があると、必ず一度はやるよね~」
「クラス対抗で白熱したっス」
「だろうね、この夕士君玉砕~」
「あぁ、壁崩れて総攻撃受けたときのだ」
「で、そっちの封筒も?」
「あ、はい。友達が帰る前にくれたやつで……」
俺は田代たちからもらった写真を封筒か出した。
一枚目に、なぜだか例のあの千晶に肩を抱かれた写真が入っていた。
あ、もしかしてこれって……。
俺は一抹の不安を感じながら次をめくってみた。そこにはどこからとったのかロビーで千晶にヒーリングしてる時の写真が。
「あー……」
その次はレストランで並んでうどんすすってる写真と、千晶の茶の準備をしたり、灰皿用意したりしてやっている時の連続写真で……
田代のやつ、なんつー写真を撮ってんだ!
「どれどれ~」
俺がもたもたしているのに焦れた秋音ちゃんが、俺の手から写真の束を奪っていった。
「千晶先生と夕士君じゃん。あ、これも。これも。これも……、~~~~っははは、こ、コレすっご~い!」
秋音ちゃん大爆笑。キャーキャー言いながら詩人と画家に写真を披露した。
「これ、カワイイと思いません?」
「どれどれ?」
「ふむふむ」
お酒そっちのけで覗き込む二人。俺は息をのんだ。おいおい、どんな写真だよ。
「ふふっ、微笑ましいね~」
「はっはっはっ、新婚カップルじゃね~か!」
「ちょっ、ちょっと、どんな写真っスか!?」
いたたまれなくなっての写真を撮り返す。そこには千晶の肩に頭を乗っけて寝ている俺と、その俺の頭に寄りかかって寝ている千晶が写っていた。まぁ、帰りのバスの中、身に覚えがないわけじゃないから、それはいい。まぁ、いいというか……微妙だが、そこまでは許すとしよう。だが、なんなんだ、この俺たちを縁取るように貼られた赤とピンクのハートマークシールは! 白のマジックで真ん中にデカデカと書かれたダーリンvハニーの文字は……!!
「………………」
「これは、長谷君には見せられないわね~」
秋音ちゃんが楽しそうに言う。
「いちゃいちゃツーショット写真集だな、こりゃ」
残りの写真を見ながらニヤける画家。
「夕士君、修学旅行じゃなくてハネムーンだったのかな?」
のほほんとした顔をしながら傷口をえぐる詩人。
クリだけが固まっている俺にギュッと抱きつき、慰めてくれた。
「クリ……、クリだけだな俺のことわかってくれるの」
「あら、違うわよ。写真の千晶先生に嫉妬してるのよ。ママ取られちゃったから」
秋音ちゃんはそう言うと、俺の手から写真を取り上げ、クリに千晶との写真を見せる。クリはまじまじとその写真を見てからプイと顔をそむけ、さらに力強く俺に抱きついてきた。
「ほらね?」
「ほらねって、秋音ちゃん……」
「ははは、クリもいっちょまえに嫉妬するようになったか~」
「ママ妙瑛に尽きるね~夕士君」
いや、俺はママじゃないっスからって言っても、この人たちにはもう通用しないんだろうな……。
「はい、夕士クン。パパに見つからないようにしまっとかないとね」
再び俺の手に戻ってきた派手にデコレーションされた写真。田代め、この写真を俺にどうしろと……。複雑な思いで見つめる俺に、まぁまぁと詩人が言う。
「これも、いい思い出ってことでいいんじゃない?」
「青春の一ページってことですか?」
「そうそう」
「まぁ、確かにインパクトだけはありますけどね……」
こうやってみんなで笑いあったのもその一つってことで、まぁ、いいかと俺は納得することにした。
でも、この写真は封印だな。長谷と龍さんにはとてもじゃないけど見せられない……。
PR
COMMENT