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都庵

現在は「妖怪アパートの幽雅な日常」「The MANZAI」の女性向け二次創作等の物置。オフラインの自家通販もやってます。

   

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十五夜

お久しぶりです。

久々のブログ用新作小話。
なんかダラダラと長くなってしまいました。
本当はオフの原稿書かなくちゃいけない時期なのに、十五夜お月さんを見たら無性に書きたくなってしまったので、遅ればせながら十五夜ネタです。

なにげに、「If~Dato~」の設定をそのまま引っ張っていますが
まぁ、読んで無くても全然問題ないと思います。

最近パソコンを買いました。
会社の昼休みに原稿書くためだけのモバイルです。
今のも十分軽いのですが、(1Kgきってる)更にコンパクトに、軽く……
と追求したら某バイオちゃんのタイプPになりました。
でも到着するのは11月の頭のほう。
今回の原稿には間に合わないので、今のFM●で我慢します。

11月1日合わせの今回の原稿。
「らぶゆぅ」用に書いた小話のオフ版です。
ぶっちゃけてしまいますと「猫耳」です。(爆笑)
気になる方はサイトの「製作記録」で確認してみてください。
末期でお約束なネタですが、
かえって妖怪アパートなら十分ありえるネタだと思います。
とりあえず、6巻詰め合わせみたいな毎回コピー地獄は嫌なので、
印刷屋さんにお願いできる間に書き上げたいと思います。
なので、またしばらくここの更新遅くなります。
ごめんなさいね。

そして、15日着のメールで通販いったん締め切ります。
再開は11月のイベント後、新刊プラスしてアップ予定です。

それでは、9巻からワ-プして、ちゃんと卒業して
千晶と夕士が付き合っている感じ。……というのを前提に読んでください。
※内容的にはアパートでの日常話です。
(ただ単にお月見が書きたかっただけなので……)

----------------------------------------------------

拍手[8回]


★読む前に補足
千晶と夕士は第一・第三土曜日はデート優先デート決めています。


『十五夜』

 居間にあったカレンダーをめくり、10月に変えたとき、俺はそれに気がついて、すぐに千晶に電話をした。
「悪い千晶、今週の土曜日、俺アパートでお月見することになってたの忘れてた!」
 今年の中秋の名月はちょうど第一土曜日、本来なら千晶との約束優先日だったが、毎年この日はアパート恒例の餅つきがある。男手が必要なのだ。
『あぁ、十五夜か。そういや、マサムネがクラブのほうでなんかやるって言ってたな。カオルがどっかそこらにチラシ置いていったような……』
「あ。そうなんだ」
『たまにはそっちに顔出すかな』
 苦笑いの声に俺はちょっとほっとした。本当なら「一緒にお月見しようぜ」って誘いたいところだが、いかんせんここは妖怪アパート、十五夜ともなれば人外率が上がる。しかもアパートの住人の面々と酒を飲もうものなら、絶対千晶はいい酒の肴だ。だから残念ながら誘えない。そのことが、俺の中で少し引っかかっていた。
 でも、マサムネさんやカオルさんと一緒なら千晶も楽しんでくるだろう。
「じゃぁ、今週の土曜日はお互い別の場所でお月見ってことで」
 俺はそう締めくくって千晶との電話を終えた。



 十五夜当日。
 空はどんより曇っていた。天気予報では雨は降らないまでも、前線が迫ってきていて雲が厚いらしい。翌日の予報は晴れなので、夜半には回復に向かうだろうとのことだが……。
「大丈夫ッスかね」
 餅つきを終え、風呂場でさっと汗を流してきた俺は、濃い灰色の空を見上げて縁側に座り、煙草をふかしている佐藤さんに聞いてみた。
「大丈夫、大丈夫。ちゃん月は見えると思うよ。今日は龍さんがいるし」
「龍さんがいるから……?」
 俺にはまったく意味がわからなかった。
 龍さんは昨日から帰ってきている。今朝は早くからどこか出かけてたみたいだけど、夕飯までには戻ると言っていたので、たぶん、もうすぐ帰ってくるのだろう。
「夕士、面白いもんが見れるぜ」
 俺と同じく、汗を流してきた画家がにやりと笑う。
「面白いもの……?」
 庭にセットされた大きなテーブルの中心には、花瓶に活けられたススキの穂、搗きあがったモチで作った月見だんごが既に用意されていた。
 曇り空の下、準備は着々と進んでいる。
「本当に大丈夫なのかな……」
 俺が不安を拭えないでいると、キッチンのほうから色とりどりの、るり子さん作・豪華秋の幸の料理が運ばれてきた
 銀色に光り輝く秋刀魚の刺身、細く刻んだ生姜と茗荷が彩りを添え、今すぐにでも白いご飯がほしくなりそうだ。
「やっぱり、この時期はサンマだよネ~」
 そう言って詩人が運んできたお盆には、秋刀魚を揚げて、人参、ピーマン、レンコンといっしょに甘辛いたれでからめたものと、王道の秋刀魚の塩焼き(山盛りの大根おろしと酢橘添え)がのっていた。
「うっわ~、うまそう~!」
「つきたてのお餅で作った礒辺巻きやきな粉餅もあるけど、今日のご飯は松茸ご飯だよ」
 桔梗さんが小さいお盆に山盛の天ぷらを乗せて来た。
「マジで! あ~早く龍さん帰ってこないかな~」
 見ているだけで、腹が鳴りそうだった。俺は桔梗さんを手伝ってキッチンへ向かおうとした。その時、さっきまでわらわらとそこかしこにあった何者かの気配がさーっとおとなしくなった。
 ということは……。
「お帰りなさい、龍さん」
「ただいま、夕士くん」
 全身黒づくめの龍さんが玄関に現れた。
 ほんと、弱い霊や形を成さない隅っこにいる奴とか、一斉に逃げていくからわかりやすい。
「おっ、帰ってきたな!」 
「龍さんお帰り~、準備できてるヨ~」
 いつの間に合流したのか、画家のほかに、詩人とクリも顔をのぞかせていた。
 画家の手には一升瓶、詩人の手にはグラスと氷。飲む気満々な住人たちだった。
 縁側へ移動すると、すでにテーブルには料理が山ほど並べられていた。乗り切らないものは居間のテーブルに第二弾として控えている。
 大人と人外のものはアルコール、俺はウーロン茶のグラスを片手に庭に出た。
 空は、月の位置がわかる程度に薄曇りになってきたとはいえ、まだお月見といえるほどには回復していなかった。それでも、十五夜を祝うために、いつも麻雀している鬼や、見たこともないもののけたちが集まってきて、庭全体はにぎやかになってきた。
「じゃぁ、早速始めようか」
 龍さんはそう言うと、右手の人差し指と中指を立て、ふっと息を吹きかけた。
 何かが始まったらしい。龍さんの目がスッと細まった。
 それを察して、ざわついていた庭の空気がぴんと張り詰める。しんとしずまった中、龍さんは何か口の中でぼそぼそと呟き、その二本の指が刀であるかのように、月の光を遮る雲に向かって一閃した。
 一瞬後にフワッと空気が動いたのが分かった。その場に起こったのは、鳥が羽ばたいたくらいのかすかな風だった。でも、それは雲に達したとたん威力を増した。雲はバッサリ左右にきり開かれたのだ。その裂け目は徐々に面積を増し、ぐんぐん雲を押しのけ、隙間に見え隠れしていた真ん丸な月が徐々にその姿を現してきた。「月」というと黄色いイメージが強いが、その月は黄色というよりむしろ白く神々しかった。
「おお~!」
「満月だー」
「月が出た~!」
「明るいぞー」
「カンパ~イ!」
「乾杯―!!」
 どっと庭がにぎやかになり、みんな盃をかざして月見を祝う。
 俺は、あまりの出来事にその場で固まっていた。だって、龍さんはちょっと空に向かって腕を振り下ろしたただけなんだぜ? それがあんな高いところまで届くなんて、どう考えてもありえないだろう!
「ね? 大丈夫って言ったでしょ?」
 ロックグラスに酒をたっぷり入れた佐藤さんが、俺のグラスにグラスを合わせてきた。
 カチーン。
 その透き通った音で俺は我に返った。
「もう、超びっくりっスよ!」
「月が出てないときは、こうやって龍さんが月を出してくれるんだよ」
 佐藤さんはグビッと美味そうに酒を飲んだ。
「じゃぁ、龍さんのいないときは?」
「そのときは……」
 佐藤さんはちらりと視線を縁側のほうへ向けた。そこには詩人や画家に酒を注がれている大家さんがいた。
「あぁ……もしかして、大家さんに頼んで月の出ているところへのドアを作ってもらう……とか?」
「正解~! 一昨年はお風呂の横の穴だったしね~」
「そういや、そうだったっスね」
 一昨年は秋音ちゃんが月野木病院の患者さん(幽霊や妖怪中心)をつれてきたので、風呂の横の滝場に、大家さんが月見用の広い場所を作ってくれた。
「ありゃ、夕士クンまだ食べてなかったの? 早く食べないとなくなっちゃうヨ~」
 いつの間にやら隣に来ていた詩人が、クリを抱いて取り皿を持ってきてくれた。
「おっと、そうだった。るり子さんの料理全部コンプリートしなくちゃ!」
 気づいたとたん腹がなった。餅つきのあと風呂にも入ったので、腹ペコだったのを今更思い出す。
 どこからか沸いてきた、いっぱいの妖怪やらなにやらに交じって、俺はテーブルの料理を片っ端から取っていく。
「ん~、どれもこれもうまーい♪」
 ウーロン茶で一服している間にも、大家さんの眷属らしき黒い丸い浴衣を着た者達が空いた皿を提げ、新たな料理を運んでくる。そして大人たちの一升瓶も二本、三本、四本と空になっていく……。(数えないほうがよさそうだ)
 全種類一通り食べきって、〆に出されたおにぎりをクリと一緒に縁側に座って、満月を眺めながら食べる。松茸ご飯の握り飯は香りが良くて、たらふく食べたのに既に二個目だ。
 龍さんがたたき切った雲は、まだ切り裂かれたまま月をよけるようにして進んでいる。
「それにしても、満月ってほんと丸くて、明るい……」
 月がよく見えるように、縁側に面している居間の電気は消している。それでも十分なほど明るい月明かり。白銀の光は一見冷たそうだけど、闇を照らしすぎない優しい光だと思う。
「きれいだな…………、そうだ」
 上手く写るかわからないけど、俺は携帯で写真を撮ってみようと思った。食堂のテーブルに置きっぱなしの携帯を取りに戻ると、着信ランプがついていた。
 開けてみるとメールが1件、千晶からだった。
『せっかくのお月見なのに曇りで残念だな』
 俺はすぐさま満月を映して返信を打つことにした。
「こちら裏技で問題無し! 画像はおすそ分け……っと」
 送信ボタンを押したところで、後ろからガシッと肩を抱かれた。画家だ。
「おっ、夕士、彼女にメールか~?」
「ち、違うっス! えっと……長谷っス! ほら、あいつ今日は来れなかったから、満月のおすそ分け」
「ふ~ん……」
 なんか視線が微妙に疑ってる感じなので、俺は本当に長谷にメールをした。いや、もともと長谷にも画像送ってやるつもりだったし。
「まぁ、そうゆうことにしておいてやるか。じゃ、とっとと風呂行って飲むぞ~」
「えっ、まだ飲むんスカ!?」
「まだまだ飲むヨ~、お風呂場のほうは雲一つ無い晴天らしいから、また別なお月様が見えるらしいヨ~」
 詩人が新たな一升瓶を抱えて先に地下へ下りて行く。
「月見酒~月見酒~、夜はまだまだだよ~夕士君」
 佐藤さんも徳利とお猪口を持って下りて行く。
「るり子さんが冷たい月見蕎麦と、デザートに白玉の小豆ときな粉がけ用意してくれてるってさ」
 龍さんも笑顔で一升瓶を片手に下りて行く。
「で、夕士はどうする?」
「もちろん、行くっス!」
 るり子さんの冷たいお蕎麦に冷たいデザート。さすがにお腹いっぱいだけど、絶対食べなきゃ損ってもんだ。
 風呂場に下りると、すでにクリが長谷に買ってもらったお風呂セットを抱えて待っていた。
 妖怪アパートの夜は、まだまだ先が長そうだだった。



 結局俺はそのあと、再び千晶にメールを送った。今度の添付画像は、満点の星空に一際輝く大きな月と、もう一つは……おまけ画像だ。



+++ 蛇足 +++


「おい、おまえメール見てにやけるなよ」
 俺はカオルにど突かれて、顔を上げた。
「いや、面白い画像もらったんだよ」
 エヴァートンのお月見パーティ。残念ながら今日は曇りで月は出ていないが、室内クラブなので、月が出ていなくてもあんまり問題は無く、パーティーは予定通り開催された。
 つまり、お月見は飲む口実ってやつで、窓から見えればこれ幸いという程度のものなんだよな。
「どれどれ、見せてみろよ」
 のぞきこんでくるカオルに俺は、稲葉から届いた月の画像を見せてやる。
「へぇ~、月が出てるところもあるのか。北海道あたりか? あそこらなら今日は晴れてるはず」
「たぶん関東だろうがな」
 稲葉のアパートで取った写真だろうから、こことそう変わらないところだろうに、なんで満月が撮れるんだか。
「こっち曇りだろう。ま、一部晴れてるとこもあるかもしれねぇが……」
 カオルは少し納得いかないようだが、次の画像を見て爆笑した。
「ぶっ、はは、コレいい! 確かに月見だ」
 表示されたのは月見蕎麦。大きなどんぶりに青菜と焼き茄子と鰹節、蕎麦の海に黄色い卵がポコンとのっている。
「よし、〆はコレにしよう。マサムネ! ちょっと来いよ!」
 カオルの提案で、急遽パーティーの最後に月見蕎麦が振る舞われた。
 もちろん、俺はその画像を残し、後で稲葉に送ってやることにした。

--------------------------
はい、オチは月見蕎麦でした。

みんなに内緒で、のんびりとしたお付き合いをしている千晶と夕士です。
おかげで、ちっともカップリングっぽい内容になりません。
淡白すぎですかね……、でもスイッチ入ったらきっとそれなりだと思います。

それにしても、私佐藤さん書くの好きだな……。(苦笑)
まり子さんや骨董屋さんも出したかったんだけど、
会話文だけで長くなりそうだったので今回カット。
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届きました!

  • by 葵
  • 2009/10/15(Thu)15:52
  • Edit
こんにちは、葵です。
「If~Dato~」届きました!

相変わらずの面白さで読んでいてにやにやが止まりませんでしたv
まさか龍さんにあんなことされるとは思っても見なかったので驚きました!
そしてそれに嫉妬してる千晶ちゃんがまた可愛かったですv

しかもコメントに書かせていただこうと思ったら小説がUPされていて2倍のうれしさでした!

毎回楽しい小説をありがとうございます。

Re:届きました!

  • by あみや都
  • 2009/10/21 19:25
葵さん

コメント返し遅くなって申し訳ありません。
本、早速読んでいただけたようで、ありがとうございます。
今回の更新は丁度いいタイミングだったようですね。
最近更新がとろいですが、またのぞきに来てくださいませ~!

by都

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