年明け一発目です。
本当はもっと早くに出来上がっているはずだったのですが、申し訳ありません。正月は食べて飲んで寝て温泉に入ったら何もできませんでした。
と、いうことで、冬の日に(後編)です。
くっついてからの話って、今回の「冬の日に」で初めて書きましたが、楽しいですね。
遠慮無しに仕掛ける千晶。まだまだ初心な稲葉。美味し過ぎます。
二人とも天然ちゃんなところを発揮して、自覚無しにイチャついて、周りをドッキリさせてもらいたいものです。
さて、今月、東京のビックサイトのシティに出ます。
冬コミに新刊出さなかったので、なにか本を作っておきたくて。
だって3月に最終巻出ちゃうし!それまでに一つでもたくさん作っておきたいんだ~~~!!ってことで、以下参加いたします。
■1月25日(日)
COMIC CITY 東京121 東5ホール「エ」10a 『都庵』※妖怪アパート
新刊は多分千晶×夕士。コピーが濃厚。時間が間に合えばオフにしたいけど、どうだろう……。
そうそう、アンケートの結果は今月いっぱいで撤収。第二段を考えておきます。
通販は1月25日以降再開いたします。
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[6回]
千晶の自宅。
「お邪魔しまっス」
「はいよ」
電気をつけながら入っていく千晶に続いて、俺も靴を脱ぐ。
千晶の部屋には何度か来たことがあるが、来るたびに、一人で住むには広い部屋だなと思う。リビングダイニング、ベットルームのほかに、書斎に使ってる部屋、ゲストルームまである。
きっとファミリー用に設計されたんだよな。そんなマンションに一人で住めるんだから、千晶ってどんだけ資産があるんだか。
「ほら、ハンガー。コートはそこにかけるところあるから」
「あ、サンキュ」
まだひんやりと空気は冷たいが、千晶が暖房を入れたので部屋は徐々に暖まりつつあった。
もらったハンガーにコートを掛けてからソファに腰掛け、俺はちょうど郵便受けに入っていたピザ屋のチラシをローテーブルに広げた。
「お勧めってなんかある? どんな系がいい?」
「お勧めってほどのもんはないな。どんな系でも好きなの選べよ」
確か、千晶は食べられない食材ってなかったから、本当にどれでもいいのだろう。
俺は色とりどりのピザに目移りしながらも一つを選んだ。
千晶は借りてきたDVDをデッキにセットしてから、電話の子機を手に戻ってきた。
「決まったか?」
「ん、これ」
値段は無視して一番ゴージャスそうなのを頼んだ。貧乏学生の俺が一人暮らしだったら絶対頼まないけど、千晶のおごりなので、遠慮なくってやつだ。
「30分くらいで来るってさ、それまでなんか飲むか?」
「うん。で、何があんの?」
「酒はいろいろ。ソフトドリンクは……、っつか、こっち来て好きなの選べよ」
手まねきされて、俺は冷蔵庫をのぞきに行った。
冷蔵庫の中にはジュースやらビールやら、見たことのない缶がいろいろ入っていた。
「千晶、これちょっと買いすぎじゃない?」
冷蔵庫の中缶だらけ。
「こないだウチでダチが持ち込んで飲んでったんだよ。その残りだ」
「へぇ~。んじゃ、これもらう」
俺は冒険はぜずスポーツドリンクを選んだ。アルコールはまだ二十歳未満なので止めておく。千晶はビールだ。
「あ~寒い」
冷蔵庫をあけっぱなしで選んでいたので、せっかくあったまりつつあった体がまた冷えてしまった。冷蔵庫を閉めると、後ろから千晶が抱き付いてきた。
「な、何?」
「寒いんだろ?」
「そりゃ冷蔵庫開けてたからであって……」
腕をほどこうとして、ふと手が止まる。
「どうした?」
千晶が肩越しに覗き込んでくる。
「いや、なんか変な感じなんだよな、こう、腕が四本あるみたいで」
「……確かに」
胴に巻きついてる手、それをはがしてる手、ビールをもつ手、ジュースを持つ手。同じセーターの袖から出てるみたいで、少し不気味だった。
「くくく、はははは」
千晶が離れて、こらえられなくなって噴き出した。どうやらツボだったらしい。
「千晶、いっそのことそのセーター着替えねぇ?」
「なんで?」
「なんでって、やっぱ変ってゆうか」
「照れんなよ。二人っきゃいないのに」
どうやら着替える気はないらしい。ま、いいけどね。
もらいものというアラレをつまみに、飲み物をあける。ベットにもなる大きなソファーに並んで座った。
「で? めずらしく高い買い物したじゃないか稲葉」
千晶がそう思うのはもっともだった。詳しく値段を知っているわけじゃないけど、長谷が買ったものなのでいいお値段のものなのだろう。
「長谷からのプレゼントで貰ったんだよ」
「へー。いい趣味してるじゃないか」
「たぶん千晶とブランドかぶってんだよ。もしかしたら、長谷と色違いとか、千晶持ってるんじゃないのか? ん? ってことは、長谷からしょっちゅうお下がりの服もらってる俺って、このほかにも千晶とかぶってるものがあるかもしれないってことか?」
「そうゆうことになるな」
「うわ~、じゃぁこれから千晶と会うとき服気をつけなきゃなんないのかよ。長谷からのもらいものの服って、着心地いいし気に入ってる服多いのに」
「そこまで徹底しなくても大丈夫だろうよ。今までだって大丈夫だったんだから。そうそう無いさ。確率で考えれば相当低い」
「まぁ、そうだけど」
その相当低い確率にぶち当たっているのが今だ。
「千晶とは変に相性がいいからな……」
俺が小さいため息を交えてつぶやくと、千晶の腕が肩に乗ってきた。
「なんだよ、俺と相性がいいのが不満だって?」
「いや、そうは言ってないけど……」
「そんなにおそろいが嫌だってか? ん?」
肩に乗っていた腕が首に巻きつき、じわじわと締めてくる。
「嫌とかそんなんじゃ……って、く苦しい、ギブギブ」
本気で絞めてきているわけではないから、大して苦しくもないが俺は降参した。腕はすぐに力が抜けたが、そのまま抱き寄せられた。
「そんなにおそろいが気に入らないなら、お前が脱げばいい」
言うが早いか、千晶は俺のセーター裾をつかむと、あっという間に奪い去った。
「うっわ、なにすんだよいきなり!」
「仕方ないだろ、お前が恥ずかしがるから悪いんだぜ」
確かに、ペアルックは恥ずかしいって気持ちもあったけど、なにも服を取り上げなくてもいいだろうに。
「寒い!」
暖房がついているとはいえ、いきなり薄着にされ、寒さで腕に鳥肌が立った。
「あっためてやろうか?」
千晶が腕を広げてにやりと笑う。
「…………」
「ほら、来いよ」
腕の中に。そう千晶は態度で示す。
「…………」
「……甘え下手だな~お前」
「だ~っ! 田代じゃあるまいし、そんなバカップルみたいなことできるか!」
俺がいつまでも抱きつかないでいると、千晶はテーブルの端にあったリモコンで暖房を切った。たちまち部屋の温度が下がっていく。
「ほら、お膳立てしてやったぞ?」
「…………そこまでするかよ……」
「照れること無いのに」
「…………」
どうやら、本当に俺が千晶に抱きつくまでこのままらしい。
千晶に抱きつくことなんて、ヒーリングのときにいつもやってたし、ましてやこうゆう仲になって、それ以上なこともしてるから今更なんだろうけど、こう正面きって抱きつくのって、とてつもなく恥ずかしい。マジ、甘えるのって羞恥心との格闘だと俺は思う。
「ほらほら、風邪引くぞ~?」
「~~~~~くっそ~」
意を決して、千晶のほうへ手を伸ばしたとき、玄関チャイムが部屋に鳴り響いた。
ピザが来たのだ。
千晶は「いいとこだったのに」と舌打ちをして玄関へ財布を持って出て行った。俺はというと、なんだか逆転さよならホームランで千晶に勝てたような気分を味わっていた。
代打ピザ屋、ありがとう。
千晶に取り上げられたセーターを着なおし、暖房を入れて、俺はスポーツドリンクを一気飲みした。寒かったのに、やけに喉が渇いていた。
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ただのイチャイチャ話です。
傍からみればただのバカップルのよう……(遠い目)
本当はいくつか分岐した話ができてしまって何度も書き直ししました。
おかげで私の頭にはアダルトバージョンルートが存在します。
どうしよう、オフで作ろうかな……(苦笑)
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