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都庵

現在は「妖怪アパートの幽雅な日常」「The MANZAI」の女性向け二次創作等の物置。オフラインの自家通販もやってます。

   

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新刊「プラチナticket」サンプル

どうも、あみやです。
遅くなりましたが、無事スパーク合わせの本のサンプルです。
ちゃんと入稿できました。

「プラチナticket」A5/52P/500円※R18
イベントの詳細&お品書きは直前にもう一回更新かけますね。

今回は企画もの。
いつもより楽しんで書けました。
共通部分は支部か企画サイトにUPされてますので
サンプルはその続きから・・・という感じです。
それでは「読んでみる」からどうぞ~。

---------------------------------

拍手[2回]


 



 

 クラスの全女子からの一斉ブーイングの翌日、俺、稲葉夕士は席に着くなり隣の席の田代に廊下へ呼び出された。
「どうしてあんたが引くかなぁ……」
 田代は、はぁと大きなため息とともに腕を組んだ。
「こればっかりは、不可抗力としか言いようがないだろう……」
 昨日さんざん繰り返したセリフを再び呟く。俺だって、少しは悪いと思っている。本来ならクラスの女子のうちの誰かが、シンデレラのように王子様との夢のようなデートができる、そんな特別なチケットだった。にもかかわらず、引いたのが男子の俺だ。譲れるものなら、譲ってやりたいところだが、そんなこをしたらくじ引きをした意味がないので、結局俺は卒業後、千晶と一日デートに行くことになったのだが……。
「まぁね。あんたと千晶ちゃん、常日頃ワンセットみたいな所あったから? 予感がしなかったわけでもないのよ。千晶ちゃんも稲葉が引いて、あからさまにホッとしてたし……」
 そりゃぁそうだろう。千晶にとって、今にもがっついてきそうな女子と比べれば、男の俺の方が安全安心ってもんだ。
「だから悔しいのよ。なんだか納まるところに納まった感じがして、余計に悔しいの! ある意味美味しいシチュエーションなんだけど、今回だけは悔しい! 非常~に悔しい!」
 いまにも地団駄を踏みそうな田代。美味しいシチュエーションとはなんぞやと思ったが、突っ込まない方が身のためなのでスルーしておく。
「そう悔しいを連呼されても……事実は変わらないぜ」
「……わかってるわよ。だから発想を転換してみたの」
 悔しいと眉を吊り上げていた顔から一転、ニッコリと晴れやかな笑顔を見せ、じりじりと詰め寄ってくる田代。
 わざわざ廊下に呼び出してきたときから、嫌な予感はしていたのだが……いよいよ本題に入るらしい。俺は後ずさりしながらひとつ息をのんだ。
「な、なんだよ」
「稲葉。千晶ちゃんと思う存分、楽しいデートをしてきなさい」
「……おまえ、さっきと言ってること逆になってないか?」
「いいのよ。デート券をゲットしたのはあんたなんだから。ただ、私たちの変わりに千晶ちゃんとデートを楽しむんだから、そのデートの内容を私たちに報告する義務があると思わない?」
 そう言って、田代はポケットから小さな機械を取り出した。デジタルカメラだ。
 俺はすべてを理解した。
「あ--……つまり、これで千晶とのデート中、どこに行ったか記録して来いと……」
「そういう事。あんたが記録してきた内容をもとに、後日千晶ちゃんプロデュースのデートを私達で追体験ツアーをやることにしたの。本当は逐一実況中継さながらの写メ送らせて後をつけたいところだけど、あんた携帯持ってないからそれで勘弁してあげるわ。この条件飲むなら、クラスのみんなも納得してくれるでしょうよ。稲葉も良心を傷めることなくデートが楽しめるんだから、一石二鳥ってもんでしょ!」
 言葉の裏に「だから、絶対嫌だとは言わせない」という強い意思をにじませ、田代はデジタルカメラを俺に押し付けた。
「…………田代、お前って典型的な転んでもただでは起きないなんとやらだな」
 そう来るかと、関心さえ覚えつつ、俺はカメラを受け取った。もうこの状況に持ち込まれては、拒みようがない。
 田代はふふんと胸を張り、カメラの使い方を俺に伝授した。
「とにかく押せば自動で調節してくれるから。簡単でしょ?」
「お、おう……充電とかは?」
「充電は十分にしてあるから平気。いい? 絶対に行った場所、食べた物、かっこいい千晶ちゃんを余すことなく撮って撮って撮りまくるのよ!」
「おう、わかった」
「稲葉」
「ん?」
「千晶ちゃんの『本気のデート』を私たちは期待してるからね」
 そう一言付け加えて、田代は上機嫌で教室へ戻って行った。
「『本気のデート』ねぇ、……ハードルあげてくれちゃって。俺相手に千晶が本気なデートを考えるわけないだろうに……」
 とにかく、カメラマンを引き受けてしまった以上、責任は重大だ。撮れてませんでしたとか、うっかり撮りそびれたなんてことになったら、きっと一生恨まれるだろう。そんなことにならないためにも、デジカメの操作に慣れておかないといけない。
 俺はさっそく教わった通りに、デジタルカメラの電源を入れた。ファインダー部分を覗き込み、被写体をさがしていると、丁度いいタイミングで、担任でありデートのお相手でもある三年C組の担任、千晶直巳が階段から現れた。ホームルームの時間を告げるチャイムをBGMにシャッターを切る。
 オートフォーカス&手ぶれ防止機能のおかげで、きれいに撮れた画像が手元の液晶画面に映る。
「こんな感じに撮ればいいんだよな……」
 とりあえずはなんとかやれそうだ。そう確信を得た俺は、後ろの扉から教室に戻ろうとしたところ、千晶に呼びとめられた。
「カメラ買ったのか?」
 俺の節約生活の事情を知る千晶の第一声はこれだった。
「いいや、これは田代の」
「あぁ、やっぱりな。どこかで見たことがあると思った」
「千晶とのデートの詳細をこれに記録しろって押しつけられたんだよ」
「あぁ……」
 まぁ、そんなことだろうとは思ったと、千晶は顔をしかめた。
「ま、そういうわけで、俺は当日カメラマンみたいになってると思うけど、そこんところヨロシク」
「ヨロシクされてもなぁ……。お前、どこ行きたい? この際、どんなデートスポットでも連れてってやるぞ」
「どんなって言われても……。だいたい俺、デートとかって、ぶっちゃけ行ったことねーし」
 自慢じゃないが、高校三年間、彼女がひと月もいた試しがなかった。生活費を稼ぐためのバイトに、まさかのプチの出現による修行と、突如決めた受験勉強で、俺の高校生活は今あっという間に終わろうとしている。妖怪アパートというちょっと特殊な環境と、二年二学期から担任になった、目の前の手のかかる教師のおかげで、時に事件に巻き込まれたりしながら、充実した日々だった。
 だからなのか、頭がちっとも女子に向かなかった。
 もともと、中学の頃はいとこの恵理子のキツイイメージが強すぎて、女子というか女性全体にいいイメージを持てなかったというのもある。高校に入って、アパートの秋音ちゃんや田代達に知り合い、やっと認識が改まったくらいだ。だから、いずれは彼女ができればいいけど、高校生活中はいらない。生活費を稼がなくちゃならないんだから、デートに時間を費やす暇はない。そう思ってきた。
 だから『デート』でどこに行きたいかなんて聞かれても、俺にこたえられるわけがないんだ。
「そうだったな。お前、女無用だったな」
 そんな俺を見てにやりと千晶が笑う。
「……悪かったな、どうせ俺はモテねぇよ。そんなモテない俺に、せっかくだからあんたがいろいろ教えてくれよ」
 俺は、ふとさっきの田代の言葉を思い出した。田代は本気の千晶のデートを引き出せと言っていた。俺に合わせたデートじゃなくて、千晶に合わせたデートという意味だろう。
「そうだ、千晶が本気で好きな人を落とす時に使う店とか、そういう所に連れてってほしいな~」
 そう俺が振ると、千晶はふむと少し考え込んだ。
「……本気ねぇ……最近ご無沙汰だからなぁ……」
「じゃぁ、新たに考えてくれよ。俺でもクラっとくるくらいのヤツ」
 千晶をひじで小突いて、ここぞとばかりにたたみこむ。田代じゃないが、俺も千晶の本気に少し興味がわいてきていた。
 千晶はちらりとこちらを見ると、「よし」と意味深な笑みを作った。
「あいつらが真似できないようなデートプランを考えてやるよ、ダーリン」
 千晶はそういうと、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃと乱暴にかき混ぜてから、教室の扉へ向かった。いつもやめろって言っているのに、千晶はよく俺の頭をいじる。
「……ったく……最後までやめなかったな、千晶のヤツ……」
 教室の中で、けだるそうな千晶のいつもの号令が響き、委員長の声が飛ぶ。
 俺は慌てて後ろの扉から教室に戻った。
 
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